黒部峡谷・下の廊下
(2012/10/09〜10)
コースタイム:
1日目
2日目
欅平(10:05) ─→ (15:30)阿曽原温泉小屋
阿曽原温泉小屋(5:30) ─→ (6:23)仙人ダム(6:40) ─→ (8:30)十字峡(8:50) ─→ (9:39)白竜峡 →
─→ (10:26)別山谷出合(10:35) ─→ (12:40)内蔵助谷出合(13:15) ─→ (14:55)黒四ダム
※各ポイントの左時刻は到着時刻、右時刻は出発時刻を表す
同行者:
Utaさん・他4名(現地で出会った方々)
TVなどで見て、長年憧れて来た黒部峡谷・下の廊下を歩いてみることにした。紅葉のベストシーズンには10日ほど 早いが、混雑を避けるためにはこの時期がいいだろうということで、10/9〜10を選んだ。
帰りの都合もあって、車はアルペンルートの西の基点・立山駅の駐車場(無料)に置き、富山地方鉄道を乗り継いで宇奈月温泉へ。 そこからトロッコ電車に乗り換えて欅平へ入る。紅葉シーズンのピークを外して来ただけに、トロッコはガラガラで、1車両に1人か 1グループしか乗っていない状態だった。
欅平
から先は、30km余りをひたすら歩くことになる。山小屋は10km付近の阿曽原に1軒あるだけで、その先は途中で中止しようにも脱出ルートはなく、黒四ダムまで歩き抜くしかない。
欅平駅構内。
左は重連の機関車、右はトロッコ電車のグリーン車両(?)
欅平駅前広場。右の茶色の建物は建築中のビジターセンター。
その手前、仮設の防護壁沿いに奥に進んだところが登山口。
10:05 欅平登山口を出発。 登山路はのっけから急勾配で始まる。
大汗かいて標高差350mほど登るとコースは平坦になる。
ここから水平歩道の始まりである。
上の花は標高900-1000mの岩場でたくさん咲いていたダイモンジソウ。
水平歩道は最初のうちは森林帯だが、すぐにアドレナリン出まくりの絶壁コースに 模様替えする。垂直に近い岩壁に幅0.5〜1m、高さ2〜3mの、”コ”の字型にくり抜いた道が延々と続く。
この辺りで、谷底まで200m近く切れ込んでいる。
対岸にいる自分自身も、当然その高さに立っている訳で、またまたアドレナリン増量となる。
志合谷の最奥部は増水時通れなくなるため、半円形に素掘りのトンネルが掘られている。
ここから入って・・・・
・・・・ここに出る(↓の位置)。
トンネルの中の様子。体を屈めていないと天井に頭をぶつけそうな高さだ。
掘削路では路肩や草木で視界が遮られて谷底は見えないので恐怖感は薄いが、 丸太で組んだ桟道では丸太越しに谷底が丸見えになる。
高度感は跳ね上がり、またまたアドレナリン増量・・・。
そんなスリルとサスペンスを4時間ほど味わったところで阿曽原温泉小屋が見え始める。 小屋が見えたところで1日目のスリリングなハイキングは終了し、この後15分ほど山道を下れば小屋に着く。
15:10 阿曽原温泉小屋到着。
早々に宿泊手続きにかかる。費用圧縮のため素泊り(6500円也)とし、夕食は持参したおにぎりなどで済ませた(因みに2食付は9500円)。 この日の宿泊者数は定員(50名)をいくらか下回った模様で、ゆったり寝かせて貰えた。
さて、次なる目的は温泉である。湯船は一つしかないので、男女1時間単位で交代で利用することになる。温泉までは小屋から歩いて 10分ほどかかる。湯船やその周りはよく手入れされていて、清潔感で不安なところはない。2本のホースでお湯が引かれていて、片方 は熱め、もう一方(画像手前)はぬるいお湯が注がれているので、場所を選べば好みの湯温が得られる。
この日は8時頃眠りに就き、朝5時まで爆睡した。
2日目
2日目の朝は5時に起床。
まだ眠っている人の邪魔にならないよう、できるだけ音をたてないよう静かに身なりを 整える。朝食は明るくなったところで摂ることにして、そそくさと小屋を出た。 5:30 小屋を出発。
東の空は薄明るくなり始めているものの無灯火で歩ける明るさではなく、ヘッドランプを点灯しての歩行である。小屋を出ると すぐに急勾配の山道が始まり、高度差100m余り登ったところで平坦なトラバースコースとなる。こうなると楽チンなことこの上なく、 鼻歌を我慢しつつ歩く。この頃にはライトなしでも歩ける程度に明るくなっていた。
1kmほど進むと、今度は一転して急勾配の下りとなる。100mほど下ると黒部本流の間近に降り立つ。上流に向かって少し進むと、 「こんなところにマンションが・・・」と思いたくなる立派な建物に行き当たる。すぐ近くの仙人谷ダムや黒四発電所に詰める人 のための宿舎らしい。更に進むと建屋内に進むよう指示があり、やがてトンネルに入る。200mほど進んだところで外に出るが、 そこが仙人谷ダムである。
仙人谷ダム。幅80m、高さ50mほどの小さなダムである。
このダムの堰堤上で朝食をとることにした。食事込みで休憩17分。
ダムを渡って対岸(右岸)に渡り、1kmほど進むと吊橋に行き着く。
これを渡って再び左岸に戻る。この後は黒四ダム直下までひたすら左岸を進むことになる。
黒四地下発電所から送電線を引き出すところ。昨日歩いたコースはこの送電線を 維持・管理するために作られた道だった。 この辺りが「S字峡」の筈だが、樹林に遮られて谷の様子はさっぱり分らない。
森を抜けると久し振りの崖道。この辺は谷底まで50mぐらい(かな?)
黙々とひたすら歩く。
S字峡辺りで合流して一緒に歩き始めた、千葉県から来たUtaさん。
ちょっと立ち止まって撮影タイム。
剱沢にかかる吊橋。
踏み板の隙間から直下の沢が透けて見えて高度感は際立つ。
8:30 十字峡に到着。
画像は展望テラスに降りて撮影したもの。
右下から左上に向かう流れが黒部本流。この時点では水量は少ないものの、水は澄み切っていた。
右上から流れ込む沢が棒小屋沢で、これを遡ると鹿島槍や爺ヶ岳に行き当たる。沢の水は途中で堰き止められて、トンネルで他の 沢に引かれるため水流は細っている。
左下から流れ込むのは剱沢で、これを遡ると剱岳に行き当たる。こちらは上流の大雪渓や氷河の雪解けが進行中らしく、 水量は非常に多かった。
アルキ(歩き)ニストの聖地(?)・十字峡通過を祝して、剱沢の滝を背景に
記念写真
を1枚。
8:50 次を目指して十字峡を出発。
十字峡から間もなくのところの滝。雨の直後などは大量の水をくぐらなくては ならないとか・・・。雨の日にこのコースを歩くと、コース全域がこんな状態になるとも言われる。
昨年10月に大崩落が起きて、通行不能になっていた現場。短期間にこの通り 立派な桟道が架けられて、往来が可能になった。
↑白竜峡に到着。黒四ダムから下流では最も川幅は狭く、
7-8mしかない。大雨で増水した時など、この道の辺りで
イワナが泳いでいるかも・・・
掘削路の天井は低いところでは身長160cm程度 →
でも頭をぶつける高さのところもある。阿曽原小屋
のHPを見ると、大きなタンコブをこさえて小屋に入る
客も少なくないとか。ヘルメット持って来てよかった ^^
水平の歩道に川が近付いて来ると、こうして勾配をつけて一定以上の高度差を 回復する。
そして再び水平の道が続く。続く。続く。
これだけ水平歩道が続くと、ちょっと飽きて来る。かといって、足腰は勾配のない 道に馴染んでしまい、急勾配の道には耐えられそうにない。
全ルートを通じて最後まで雪渓が残り、通行可能となる時期を左右するのが この場所。例年9月中旬まで道を塞いでいるそうな。
↑大ナメ滝。直線的に落ちる様子は、「お見事!」という他ない。
←危険箇所を迂回するハシゴ。
元々の通路は左の岩盤の下を通っていたが、掘削した歩道に大きな
亀裂が入って崩れそうになったため、ハシゴで高巻き している。岩の頭
を越すとすぐに下りのハシゴに移り、10mほど先に降り立つ。
12:40 内蔵助谷出合に到着。
ここで大休止をとり、ついでに昼食をとることにした。ここから黒四ダムまでは1時間半の距離である。
内蔵助谷出合を過ぎると、もう絶壁の道はない。普通の山道を25分ほど歩いた頃、 稜線上にダムの付帯設備が見え始める。更に20分ほど歩き、本流の大きな屈曲部を越えたところで、ダムの巨大なシルエットが 目に飛び込んで来る。一同(同行5人)から歓声が上がる。
ダムの下流500mのところに架かった橋を通り右岸に渡る。残りはダムの堰堤の高さ(186m)だけだが、長距離 を歩き通して来た後だけに足腰は悲鳴を上げている。太腿が攣りそうになるのを、騙し騙し歩いて、やっとの思いで勾配のない 林道に辿り着いた。
案内板の示すままにトンネルに入り、何回か右左折を繰り返すとパッと目の前が明るくなりトロリーバスが目に入った。 良かった〜〜〜。これで歩きも終わりだ〜・・・・と思ったら、そんなに甘くはなく、押し寄せる観光客を掻き分けながら更に 5分ほど歩いてダムの本体に出た。
ここまで一緒に歩いて来た5人の内、1人は扇沢に降り、3人はダム周辺の小屋でもう1泊、私は立山の山塊をくぐって西の基点・ 立山駅まで降る・・という風にバラバラなので、ここでお世話になったお礼を言って別れた。
この後、ケーブルカー、ロープウェー、トロリーバス、路線バス、最後にもう一度ケーブルカーという風に、文明の利器を総動員 して立山駅に辿り着いた。
何はともあれ、転落しなくてよかった〜。
●ここに掲載した写真は、大判のスライドショーでご覧いだだけます。
コチラ
からどうぞ。